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#1 いつでも使えるわけじゃない”I don’t know.”

英語なるものは何と面倒な物か……。
何の因果か勉強での英語しか知らないのに外国人バーに入ってしまった俺は思った。
今日も今日で、いきなり入ってきたネイティブに英語が通じなくて困っちまった。
I don’t know.って、いつ使ってもいいって訳じゃないのね。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

夜の9時過ぎ、団体客が帰りホット一息ついた所で、ネイティブがふらっと入ってきた。
Bar Will、新宿歌舞伎町、コマ劇に向かう道を左にそれた雑居ビルの地下の店だ。”English Friendly Bar”ってことで、よくネイティブがよってくれる。ただ、困ったことに俺、兵衛門は英語がからっきしだめなんだなぁ、これが。面接のとき、英語は話せなくていいって言ったディドの野郎をうらむよ。毎日、冷や汗のかき通しだ。

で、件のネイティブ、カウンターに寄りかかると、ペラペラと早口で話し始めた。もう既に酔っ払っているらしい。全然、聞き取れねぇ。
(はえぇよ、なに言ってんだかぜんぜんわかんねぇ)
閉口した俺はゆっくり言ってもらおうと思って、
“I don’t know.”
と、返す。
“?”
一瞬、マシンガンのような早口が止まった。ほっとしたのもつかの間。そのネイティブは、ますます早口で、何かを言い始めやがった。
(なんじゃぁぁ、なに言ってんだか、ますますわかんなくなるじゃねぇか)
“I’m sorry. Just a moment. I don’t know.”
ネイティブが息継ぎするタイミングを見計らって、言葉をねじ込む。ネイティブがまた、怪訝な顔をする。やべ、全然、俺の言いたいことが通じてねえ。
案の定、一瞬とまった、英語の洪水がまた勢いを増して、迫ってきた。
もう、勘弁してよ。

I don’t know.の連発は危険!
ディド 「ああぁ、また、兵衛門、やっちまったね」
ほうほうの体で帰ってくる兵衛門。
兵衛門 「やっちまったってなにさ? 言ってることが判らないときには、判んないって言えって言ったのはディドじゃねぇか」
ディド 「そりゃ、そうだけど。そういうときのI don’t know.はタブーフレーズだよ」
兵衛門 「?」
ディド 「だって、I don’t know.って私は知らないってことじゃん。伝える義務のあるSpeaker’s DutyのNative English Speakerはますます一杯早口で情報をあげようとしてしまう」
兵衛門 「え~。じゃあ、そういう時はどういうのさ?」
ディド 「言ってることが『理解できない』ことで」
兵衛門 「なるほど、I can’t understand.かぁ」
ディド 「ぶっぶ~」
兵衛門 「あ、いけね。can’tはいつも能力がないってことか」
ディド 「そういうこと」
兵衛門 「I don’t understand.ね」
ディド 「そう、その前後に、I’m sorry. I don’t understand. Please explain.とか入れるとなおいいね」
兵衛門 “I’ve got it. Ta!”

Dialogue written by Juliane Pyper

Hyoemon: I'd like to get a ticket for the bus from Calgary to Edmonton.

Clerk:    I’m sorry I can’t sell you one.

Hyoemon: I’m sorry.  I don’t understand.  Please explain.

Clerk :    The bus is not running.  The workers are on strike.

Hyoemon: Oh!  I didn’t know that!

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