#4 責めるつもりじゃないのよ、I was waiting for you.
英語なるものは何と面倒な物か……。
何の因果か勉強での英語しか知らないのに外国人バーに入ってしまった俺は思った。
今日も今日で、予約して来てくれたネイティヴに声をかけて、怒らせちまった。
「お待ちしておりました」って直訳してI was waiting for you.じゃないのかよ。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
“Hi, I was waiting for you.”
俺は、どやどやと入ってきたネイティブのお客様にあいさつする。
いつも閑古鳥が鳴いているBar Willに、わざわざ予約して来てくれたお客様なのだ。
大事にせねば。ディドの野郎、まったく働く気がないんだもんなぁ。俺ぐらい愛想よくしないと、つぶれちまうよ。
だが、俺のあいさつを聞いた途端、5人いたネイティブが5人とも、大きな壁の大きな古時計を見た。
“……”
へんな目配せをして、沈黙が流れる。
あれ、「お待ちしておりました」って言っただけなのに、何なんだこの雰囲気は?
“Oh, What he really wants to say is ㊥νΩ∬☆Ж★△.”
と、カウンターに陣取っていたキャサリンさんが早口で何か言うと、とたんに、Oh, I see.とか言いながら、ネイティブたちが安心したように、おしゃべり始めた。
キャサリンさんは、さっと、カウンターに向き直ると、手にしていたマルガリータをキュッと呑み干す。おお、なんだか判らないが、なんちゅうかっこよさだ。ディドの妹さんでなければ、惚れるね、こりゃ。
I was waiting for you.は、遅刻した相手を責めるときに使う言葉。
キャサリン 「おごってよ。助けてあげたんだから」
兵衛門 「ええ、もちろんですよ。でも、何がいけなかったんだろう?」
キャサリン 「じゃあ、それ、教えてあげたら、バーボン1本キープにしといてね」
兵衛門 「ええ~、高っかい授業料だなぁ」
キャサリン 「いいのよ。興味がないんなら。私はどっちでもいいんだから」
女だてらにバーボン好みといい、この斜に構えたところといいどこまで、デカダンなかっこ良さなんだ、この人はと思いながら、俺は封を切っていないバーボンにキャサリンさんのネームカードをかける。いいや、後でディドの給料から天引きってことにしとこ。
兵衛門 「1本入れときましたよ。I was waiting for you.のいけないところ、教えてください」
キャサリン 「それは、デートの約束の時間に遅刻した相手に言う言葉なの」
兵衛門 「?」
キャサリン 「『お待ちしておりました』というより、『時間に遅れやがって、あなたをずっと待っていたわよ』っていう不満の言葉なのよ」
兵衛門 「なるほど。不満がこめられてるわけだ。じゃあ、正しくはどういうんですか?」
キャサリン 「『お待ちしておりました』=『あなたにお会いすることを愉しみにしておりました』って考えて」
兵衛門 「なるほど、I was looking forward to seeing you.ね」
キャサリン 「そういうこと」
兵衛門 “I’ve got it. Ta.”
Dialogue written by Rich Eddington
(Phone rings)
Catherine: Hello.
Hyoemon: Hi Catherine; this is Hyoemon.
Catherine: Hi Hyoemon; it's great to hear from you.
Hyoemon: Are you free on Sunday at around 11 am? I'd like to meet you.
Catherine: Sure, I can meet you then.
Hyoemon: Great! So I'll meet you at 11 on Sunday.
Catherine: I'm looking forward to seeing you.
Hyoemon: See you then!
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